広島檸檬   

紙、岩絵具、金泥

制作年:2020年、初春

御売約

伽々さんの絵は、だれにも見られてはいけない気がする。激しい雨音が外界を遮断するとき、絵を持ちだして掛ける。透きとおった球体のなかに立ちつくすとき、その淡い色彩のなかで遊んでいるとき、だれにも見られてはいけない気がする。祈るとき、ひとりがいいのと同じように。じっさい、伽々さんはこの檸檬の絵を供物だといって、箱に仕舞った。