浄瑠璃寺摺仏  阿弥陀如来坐像  百躰一版  平安時代(12世紀前半頃)

 本紙:43.8cm×28.4cm 

掛軸:124.0cm×34.0cm

御売約

京都と奈良の県境、山間にひっそりと点在する小さな寺院群、その一角にこぢんまりと浄瑠璃寺は在ります。その地に平安浄土思想隆盛の頃に祀られた九躰の阿弥陀さまがおられるのですが、こちらの摺仏は、そのご本尊の胎内に納められていた、と伝えらるものです。末法の世において、浄土に転生することを願い、まいにち百躰のほとけさまを摺るという行為は、紙の貴重な時代に、十枚摺れば百躰のほとけ、千枚摺って百万躰と、千躰仏などにみられる多数造仏に通ずるように、作善作法であったようです。千年ちかくを経て現存する一枚一枚は当時の信仰の在り方を伝えるものとして大変貴重なものであることは万人の知るところですが、阿弥陀如来さまのお顔をおひとりづつ眺めていると表情の多様さに、また彫線の素朴さに頬がゆるむと同時に、一歩下がるともの言わぬ連続美を称えており、ひとつの作品として成立していることも、摺仏の魅力といえるのではないでしょうか。

また、本来板木は百躰一版なのですが、当時漉かれた簀桁の寸法が板木よりも小さかったため、紙を糊で一行分継いで使用していたようです。こちらはその一行分が剥がれた状態のもので、九十躰を数えます。